Schi Heil と叫ぶために

hiroakiuno's blog

2016年の世界のリスクを集めてみた

2016年世界の何大リスクというよう雑誌記事を連続で目にしたら、どれが共通でどれが差分なのか気になり、せっかくなので他の有名どころのリスク分析も集めて整理してみた。今回集めたのは、

  • 世界経済7つのリスク (Newsweek 2016年3/1号)
  • 日本企業を取り巻く8つのリスク (東洋経済 2016年3/12号)
  • 発火の可能性が高いグローバルリスク Top 5 (世界経済フォーラム Global Risks Report 2016)
  • 実際に発火した場合に影響が大きいグローバルリスク Top 5 (世界経済フォーラム Global Risks Report 2016)
  • 2016年のトップ・リスク (米ユーラシア・グループ)
  • Global Risks 2016 (2016年版PHPグローバル・リスク分析)

順に列挙すると、

世界経済7つのリスク (Newsweek 2016年3/1号)

  1. Gゼロ
  2. 石油
  3. PIGS
  4. ドイツ銀行
  5. 自動取引
  6. BRICS
  7. 恐怖そのもの

Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2016年 3/1 号 [世界経済 7つのリスク]

Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2016年 3/1 号 [世界経済 7つのリスク]

日本企業を取り巻く8つのリスク (東洋経済 2016年3/12号)

  1. マイナス金利
  2. アップルショック
  3. 円高転換
  4. 資源安
  5. 米国ピークアウト
  6. 中国異変
  7. インバウンド失速
  8. 消費税先送り

発火の可能性が高いグローバルリスク Top 5 (世界経済フォーラム Global Risks Report 2016)

  1. Large-scale involuntary migration (大規模な難民問題)
  2. Extreme weather events (極端な気象変動)
  3. Failure of climate change mitigation and adaptation (気候変動緩和策の失敗)
  4. Interstate conflict with regional consequences (国際紛争)
  5. Major natural catastrophes (自然災害)

Global Risks 2016 - Reports - World Economic Forum (訳はこちらを利用)

実際に発火した場合に影響が大きいグローバルリスク Top 5 (世界経済フォーラム Global Risks Report 2016)

  1. Failure of climate change mitigation and adaptation (気候変動緩和策の失敗)
  2. Weapons of mass destruction (大量破壊兵器)
  3. Water crises (水危機)
  4. Large-scale involuntary migration (大規模な難民問題)
  5. Severe energy price shock (エネルギー株の極端な価格下落)

Global Risks 2016 - Reports - World Economic Forum (訳はこちらを利用)

2016年のトップ・リスク (米ユーラシア・グループ)

  1. 同盟の空洞化
  2. 閉ざされた欧州
  3. 中国の占有スペース
  4. IS と「友人」たち
  5. サウジアラビア
  6. 科学技術者の興隆
  7. 予測できない指導者たち
  8. ブラジル
  9. 十分でない選挙
  10. トルコ

ユーラシア・グループ「2016年のトップ・リスク」

Global Risks 2016 (2016年版PHPグローバル・リスク分析)

  1. 中国経済悪化と国際商品市況低迷に挟撃されるアジア中進諸国
  2. 止まらない中国の海洋進出が招く緊張の増大と拡大
  3. 深まる中国依存と主体思想の狭間で揺れ動く北朝鮮
  4. テロと移民問題がもたらすEUの亀裂と反統合の動き
  5. グローバル化するISILおよびその模倣テロ
  6. 加速するサウジアラビアの国内不安定化と原油市場の混乱
  7. 地域覇権をめざし有志連合内で「問題児化」するトルコ
  8. 選挙イヤーが宙づりにする米国の対外指導力
  9. 金融主導グローバル化の終焉で幕が開く、大企業たたきと「P2P 金融」時代
  10. 加速するM2M/IoTが引き金を引くサイバー脅威の現実化

政策シンクタンク PHP総研 外交・安全保障 政策研究・政策提言 「PHPグローバル・リスク分析」2016年版

という感じ。

ちなみに、今回驚いたというか発見だったのが Newsweek に書いてあった中国の GDP 成長率の情報は信頼できないという説明。中国が GDP 成長率目標を 7% から 6.5% に下げたというようなニュースはよく耳にしていたが、そのたびに 6.5 % でも十分高いじゃん、そんなに問題なんだろうかとずっと思っていた。

それに対して中国政府が発表している数値は信頼できず実際はもっと低いと。調べてみると確かにそうらしい。ややこしいもんだ。

FinTech をはじめとする X-Tech ってどれくらい種類あるのか

先日、いつもの美容室に行ったらクレジットカード決済の方法が従来のものから楽天スマートペイに代わっていた。これも FinTech の一つなんだろう。

昨年 2015 年の技術トレンドの一つに、動画サービス、AI、IoT、シェアリングエコノミーなどと並んで FinTech がある。

Finance × Technology で FinTech だが、技術やビジネスの盛り上がりはともかく、「× Technology」 って安易だよなと思っていた。だいたい何か新しいことすれば Technology だろうし、昔からバイオテクノロジーと言うように Technology つけることに目新しさはない。でもそういえば、ちょっと前は AdsenseAdWords みたいな広告技術をアドテク(Ad×technology)って言ってなと思い出し、きっとブームにあやかってこの手の略語がごまんとあるんじゃないかと思って調べてみた。どうやら X-Tech と呼ぶらしい。つまり X はパラメータで何でもでもありですよと。

FinTech に続くメジャーどころとしては、EdTech(教育×Tech) が見つかる。以前からある Skype 英会話なんかもここに属するんじゃないかと思う。あとは MediTech(医療xTech)HealthTech(ヘルスケアxTech) がある。その他、AgriTech(農業xTech)RETech (不動産×Tech)SportTech(スポーツ×Tech) あたりは確かになと思うところがある。FoodTech(食×Tech) は名前からはピンと来なかったが、配達に関する進化が生鮮食品まで及んでいることは最近よくニュースで見かける。

ただ、FashTech(ファッションxTech) までいくと略語にちょっと無理が出てくるし、GovTech(公的分野xTech) に関しては略語にあやからず行政の技術革新がんばろうと言いたい。

追記

他にもいくつか見つけた。LegalTech というのは思いつかない組み合わせだった。

書評 - 大世界史 現代を生きぬく最強の教科書

ここ最近日本人以外の人と仕事をする機会が増えた。言語能力の問題で言いたいことが言えなくて苦しむことも多いが、ちょっとした会話の際に文化や歴史認識の間違いが心配で発言をためらうこともある。また地政学リスクという言葉もよく聞くようになった。世界全体がなんだか混乱していて先が不透明だ。
そんな中、中東問題をはじめ特に宗教が絡んでいる最近のトピックスを少しでも理解したいというモチベーションで読んでみた。中東をはじめ、中国、ドイツ、ロシア、アメリカ、沖縄などの幅広い問題が歴史と紐づけて説明されていた。

「情と理」というフレーズがある。最近私の仕事では理の方を強く求められていると感じているが、人間を相手にする以上、論理だけではうまくいかないものもある。なんかあいつ嫌いだからというのはよくある情の一つだが、もっと広く考えると、歴史や宗教に関係する問題もそうだと思う。

だからこそ、主婦やビジネスパーソンにも、歴史を学ぶ意味があります。一人の人間が、人生のなかで経験できることには限りがある。しかし、歴史を学ぶことによって、自分では実際には経験できないことを代理経験できる。こうした代理経験を積むことは、単なる娯楽にとどまりません。より直接的に、人生に役立つのです。論理だけでは推し量れない、現実の社会や人間を理解するための手がかりになるからです。

ごみ × IoT でスマートごみ収集

以前から不便だと感じているものの一つに毎週決められたごみの日がある。この前の年末年始も大掃除を済ませてすっきり帰省と行きたかったがごみの日は次の日で、仕方なくごみは家で年越しした。

前日から出しておけば近隣の問題になるし、かといって明日ついでに出しといてという近所づきあいにも無理がある。最近シェアリングエコノミーとかマッチングビジネスが流行っているのでそれに絡めて「いい感じ」に解決できないかと考えたことはあるが、やはり物理的にもごみで心理的にもごみなので難しい。

そんな中、この問題を別の角度から IoT と絡めて解決しようとする Enevo というサービスを見つけた。

vimeo.com

こちらの PDF によると、ごみ処理コストの約半分は収集・運搬費らしい。そこで毎週決まった日にごみがあろうがなかろうが回収に行くのではなく、ごみ箱にセンサーをつけ、超音波でごみの量を測り、収集側にフィードバックし、効率よく回収するという仕組みだ。

調べると Enevo の他にも Smartbin という類似のサービスや、センサーではなくごみ箱そのものの BigBelly Sorlar というサービスもある。BigBelly Sorlar は日本でも大学のキャンパスを使って実験が始まっているそうだ。

流行りの IoT にあやかったスマート○○というサービスが山のようにあるが、実際にスマートなのはそれほどない。IoT がらみのスマートなよい例として覚えておこう。

big.LITTLE の制御ソフトウェア技術を整理してみよう (その3)

前々回前回からの big.LITTLE の勉強の続き。

続いて big.LITTLE MP (GTS) について。例によって

からポイントを引用すると、

 前回の記事でbig.LITTLE MPもIKSと同じCPUのオペレーティングポイントを使っていると書いたが、これは古い仕様で、現在は異なるという。ARMによると、big.LITTLE MPでは、Linux/Unixでのスケジューラへのキューである「run queue」から得られる「load average」によるCPU負荷の値を使っているという。原則的にはrun queueでの占有率が高くなり、load averageの比率が一定を越えると、そのCPUコアをLITTLEコアからbigコアへと切り替える仕組みだ。

ここで、run queue と load average について調べる。まず run queue というのは実行可能なプロセスが登録されているキューのこと。run queue は CPU ごとにある。

実行可能なプロセスはRUNキューに登録されます。Linuxカーネル2.6のRUNキューは実行優先度ごとにスロットを用意しています。

(略)

マルチプロセッサシステムでは、RUNキュー(activeキューとexpiredキューの組み)をCPUごとに用意します。CPUごとに用意したプロセススケジューラは、そのCPU用のRUNキュー上のプロセスに対して働きます。この構造により、特定のプロセスは、毎回特定のCPU上で実行されることとなり、キャッシュメモリやTLBが有効利用されます。

UNIX USER 2004年6月号「Linuxカーネル2.6解読室」より転載:プロセススケジューラの実装――プロセススケジューリング(その4) (1/2) - ITmedia エンタープライズ

次に load average は CPU 使用率とは異なるシステム負荷指標で、

Linuxロードアベレージは「ロードアベレージは過去1分、5分、15分の間の実行待ちプロセス数の平均数 = 実行したくても他のプロセスが実行中で実行できないプロセスが平均で何個ぐらい存在してるか」を示す値です。ボトルネックが CPU、メモリ、ディスク等々どこにあるかは関係なく、仕事の実行までにどれぐらい待たされているかを示す値なので、システムのスループットを計測する指標の入り口になる値です。
マルチコア時代のロードアベレージの見方 - naoyaのはてなダイアリー

とのこと。

で、big.LITTLE の記事に戻ると、

 big.LITTLE MPではrunqueueから得られるload averageによってCPU負荷の情報を得ている。big.LITTLE MP側には負荷に対するマイグレーションしきい値(migration threshold)が設定されており、それを越えるとコアを切り替える。ただし、LITTLEからbigへとアップする時のしきい値と、bigからLITTLEへとダウンする時のしきい値は異なる設定がされている。

とある。最大のポイントは IKS では「CPU 使用率」を見て「big と LITTLE のコア」をガチャンと切り替えていたのに対し、big.LITTLE MP では「load average」を見てタスクの 「big と LITTLE への割り当て」を変えていることだろう。ちなみに load average と CPU 使用率との違いは

がわかりやすい。

また big と LITTLE が頻繁に切り替わりすぎないようにヒステリシスを設けていることが上記からわかるし、

現在のbig.LITTLE MPの場合は、これまでロードしたことがない新しいスレッドをローンチする場合には、まずbigコアに割り当てる仕様となっているという。

 ただし、この場合、全てのスレッドが必ずLITTLEコアに割り当てられて立ち上がると、ムダな電力消費が生じてしまう。そこで、big.LITTLE MPではヒストリテーブルをスレッド毎に参照することで、負荷が小さいスレッドはLITTLEコアに割り当てる操作を行なっているという

という風に、初期の割り当てをどうするかや履歴を見てインテリジェントに割り当てるなどの工夫がされている。

最後に、IPA と EAS について。前々回に用語を整理していた際は、GTS -> IPA -> EAS という進化なのかと思ったが、もう少し資料を読んでみると big.LITTLE 技術としての進化は GTS -> EAS であって、IPA はその前提となる技術のようだ。少なくとも IPA は big.LITTLE に限った話ではなさそうで、熱の予測を考慮して CPU の電力を変えるという技術のようだ。Linux の mainstream にも取り込まれている。Proactive という単語が強調されているように、IPA のポイントも熱の「先読み」「予測」になっている。

で、IPA も踏まえて GTS を発展させたのが EAS みたい。EAS のポイントは、GTS の load average に加えて、IPA の熱の予測も踏まえ、また従来の DVFS も含めて、負荷/熱/電力/周波数をトータルでコントロールするために big.LITTLE を用いる仕組みということのようだ。

  • Energy Aware Scheduling
    • Integrates CPU capacity awareness, Energy model, DVFS & Idle into mainline Linux scheduler
    • Designed to support a wide range of topologies
    • Prototypes running today

https://s3-ap-southeast-1.amazonaws.com/dgfactor/arm2015/Taipei/A2_ThermalVision_v5_Techcon2_TM_v1+-+Taiwan_Thomas+Molgaard.pdf

その他、まだ全然読めていない記事や参考資料。

big.LITTLE の制御ソフトウェア技術を整理してみよう (その2)

前回の続き。前回は主に用語を整理したので続いて中身の整理。よく知らないものはその都度調べていこう。

まずは IKS について。【後藤弘茂のWeekly海外ニュース】2014年にはメジャーになるARMの省電力技術「big.LITTLE」 - PC Watch からポイントを拾っていくと、

 IKSの利点は、OSのスケジューラに変更を加えず、スケジューラの下で動作する2,000行くらいのコードで実現していることだ。IKSでは、OSのスケジューラからはCPUコアは通常の対称型のSMP(Symmetric Multi-Processor)構成に見えているが、ハードウェア的には非対称なAMP(Asymmetric Multiple Processor)構成となる。

 LinaroのIn-Kernel Switcher(IKS)は、CPUコアを切り替える際に、CPU負荷に応じる。切り替えの遷移ポイントの決定には、CPUコアの電圧と動作周波数を切り替える「DVFS(Dynamic Voltage and Frequency Scaling)」の仕組みを使ってる。LinuxのCPUFreq Governorサブシステムが、CPU使用率をモニタしてCPUの動作周波数を遷移させる。IKSは、DVFSが一定のポイントに達した時にCPUコアをスイッチさせる。

そのため、IKSでは、バーチャルOPP(Operating Performance Point)を設定して、Cortex-A7とCortex-A15それぞれの実際のDVFSポイントにマップしている。OSから見えるのは、バーチャルOPPとなる。

 こうした仕組みを取っているため、IKSではGovernorサブシステムの味付けで、ある程度振るまいを変えることができる。パフォーマンス優先のGovernorなら、より多くbigコアに割り振られることが多くなる。逆に省電力優先のGovernorをベンダーが選択すると、よりLITTLEコアの比率が高くなる。

ここで CPUFreq Governor とか OPP って何なのか調べてみる。

まず CPUFreq というのが一つの単語で、消費電力を抑えたりするために CPU の周波数を上げ下げする linux の仕組みらしい。で Governor は CPUFreq の要素とある。要素というのを Governor と Driver に分けているので、Driver が実体のことだとすると、Governor の方は周波数や電圧を動的に変更するアルゴリズムみたいなものだろうか。

What is CPUFreq?

CPUfreq is a linux kernel framework that monitors the performance requirements of a processor(s) and takes decisions to increase or decrease operating frequency in order to save power and/or reduce leakage power.

CpuFreq Architecture

CPUFreq consists two elements
The Governor - that makes decisions
The Driver - acts based on the decisions made by the governor


DVFS User Guide - Texas Instruments Wiki

1. What Is A CPUFreq Governor?
==============================

Most cpufreq drivers (except the intel_pstate and longrun) or even most
cpu frequency scaling algorithms only offer the CPU to be set to one
frequency. In order to offer dynamic frequency scaling, the cpufreq
core must be able to tell these drivers of a "target frequency". So
these specific drivers will be transformed to offer a "->target/target_index"
call instead of the existing "->setpolicy" call. For "longrun", all
stays the same, though.

How to decide what frequency within the CPUfreq policy should be used?
That's done using "cpufreq governors".

https://www.kernel.org/doc/Documentation/cpu-freq/governors.txt

以下も参考。

また OPP というのは Operating Performance Point の略で、DVFS で切り替える周波数と電力をペアにした単位のことのようだ。

1.1 What is an Operating Performance Point (OPP)?

Complex SoCs of today consists of a multiple sub-modules working in conjunction.
In an operational system executing varied use cases, not all modules in the SoC
need to function at their highest performing frequency all the time. To
facilitate this, sub-modules in a SoC are grouped into domains, allowing some
domains to run at lower voltage and frequency while other domains run at
voltage/frequency pairs that are higher.

The set of discrete tuples consisting of frequency and voltage pairs that
the device will support per domain are called Operating Performance Points or
OPPs.

https://www.kernel.org/doc/Documentation/power/opp.txt

で、IKS のまとめとしては下記がしっくりくる。

LinaroのIKSは、CPU負荷に応じて2つのコアを切り替える。切り替えの遷移ポイントの決定には、負荷に応じてCPUコアの電圧と動作周波数を切り替える「DVFS(Dynamic Voltage and Frequency Scaling)」の仕組みを使ってる。Linuxの場合は、CPUFreq Governorと呼ばれるサブシステムがあり、CPU使用率をモニタしてCPUの動作周波数を遷移させる。IKSは、Governorからの情報で、DVFSが一定のポイントに達した時にCPUコアをスイッチさせる
【後藤弘茂のWeekly海外ニュース】海外のオクタコア版GALAXY S4の「big.LITTLE」ソフトウェアアーキテクチャ - PC Watch

長いので一旦ここで切ってつづく

big.LITTLE の制御ソフトウェア技術を整理してみよう (その1)

http://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/1month-kouza/20140626_655176.htmlpc.watch.impress.co.jp
上記の ARM の記事を見つけて、そこからいろいろたどってみたのだが、ARM の big.LITTLE の制御ソフトウェア技術(ユースモデル、ソフトモデルとも書かれている)の表記がいろいろ変わってわかりづらい。そこで Web の記事だけを拾って客観的に整理してみた。

まず一番日付が古い 2011/11/30 の 【後藤弘茂のWeekly海外ニュース】ARMの新省電力技術big.LITTLEプロセッシング - PC Watch によると最初は2個で、

  1. Task Migration Use Model
  2. MP Use Model

http://pc.watch.impress.co.jp/img/pcw/docs/494/357/5.jpg

次に 2013/05/21 の 【後藤弘茂のWeekly海外ニュース】海外のオクタコア版GALAXY S4の「big.LITTLE」ソフトウェアアーキテクチャ - PC Watch によると、分類が3つになり、

  1. Cluster Migration Use Model (Hypervisor Mode)
  2. CPU Migration Use Model (In-Kernel Switcher Mode)
  3. MP (Multi-Processing) Use Model

http://pc.watch.impress.co.jp/img/pcw/docs/600/181/11.jpg

続いて 2013/12/18 の 【後藤弘茂のWeekly海外ニュース】2014年にはメジャーになるARMの省電力技術「big.LITTLE」 - PC Watch および、2013/12/20 の 【後藤弘茂のWeekly海外ニュース】2014年のARMのSoCの中核技術となる「big.LITTLE MP」 - PC Watch では、3つ目が global task scheduling と呼ばれるようになり、MP は括弧の中に入った。

  1. Cluster Migration Use Model (Hypervisor Mode)
  2. CPU Migration Use Model (In-Kernel Switcher Mode)
  3. Global Task Scheduling (big.LITTLE MP)

http://pc.watch.impress.co.jp/img/pcw/docs/628/049/10.jpg

http://pc.watch.impress.co.jp/img/pcw/docs/628/480/01.jpg

さらに最近の 2015/11/28 の 【後藤弘茂のWeekly海外ニュース】Cortex-Aファミリーのダイエリアの変化から見えてくる次世代ARM CPU「Artemis」 - PC Watch では Heterogeneous がついた。

  1. Cluster Migration Use Model (Hypervisor Mode)
  2. CPU Migration Use Model (In-Kernel Switcher Mode)
  3. Global Task Scheduling (Heterogeneous Multi-processing)

http://pc.watch.impress.co.jp/img/pcw/docs/732/643/MP.png

経緯を拾っていくと、Cluster Migration Use Model は Task Migration Use Model の名称が変わったもの。

しかし、その後、ARMは路線を変更した。2012年秋の同社のカンファレンス「ARM Techcon」では、タスクマイグレーションと呼んでいたモデルを「クラスタマイグレーションモデル(Cluster Migration Model)」に名称変更。その上で、クラスタマイグレーションはプロトタイプのみで終わり、実際の製品向けには提供されないことになった。
【後藤弘茂のWeekly海外ニュース】海外のオクタコア版GALAXY S4の「big.LITTLE」ソフトウェアアーキテクチャ - PC Watch

また、技術の名前かソフトの名前か、Linaro が実装するか ARM が実装するか、で同じものでも呼び名が別になっている様子。

ここで用語を整理しておくと、Linaroの「big.LITTLE In-Kernel Switcher(IKS)」とARMの「big.LITTLE CPU Migration」は全く同じものだ。それに対して、big.LITTLEのCPUコアをOSスケジューラで効率的に使う技術自体のARMでの名称が「Global Task Scheduling(GTS)」。そして、GTSのARMでの実装が「big.LITTLE MP」パッチセットとなっている。また、big.LITTLE MPは、Linaroでは一時「Heterogeneous MP(HMP)」と呼ばれていた。さらに、現在Linuxコミュニティで議論されている、big.LITTLE対応も含む電力対応タスクスケジューラは「Power-Aware Scheduler」などと呼ばれている。
【後藤弘茂のWeekly海外ニュース】2014年にはメジャーになるARMの省電力技術「big.LITTLE」 - PC Watch

ARMベースSoC(System on a Chip)の省電力技術「big.LITTLE」。big.LITTLEでは、現在、2種類のソフトウェアモデルが提供されている。1つは、Linaro(ARMベースのLinuxコアテクノロジの共同開発のための非営利エンジニアリング組織)が開発した「big.LITTLE In-Kernel Switcher(IKS)」。これは「big.LITTLE CPU Migration」とも呼ばれる。

 もう1つは、ARMが開発した「big.LITTLE MP」で、「Heterogeneous MP(HMP)」とも呼ばれる。ヘテロジニアスな構成のCPUコアを、拡張したOSスケジューラで使う技術コンセプト「Global Task Scheduling(GTS)」の現在の実装のパッチセットがbig.LITTLE MPだ。前者はLinaro、後者はARMで、しかも両者でそれぞれの呼び方が異なるためやや混乱しがちになっている。
【後藤弘茂のWeekly海外ニュース】2014年のARMのSoCの中核技術となる「big.LITTLE MP」 - PC Watch

またこちらを見ると

What’s the difference between "Global Task Scheduling" and "big.LITTLE MP"?
Global task scheduling is the technique of using all cores under control of the scheduler. The big.LITTLE MP patchset is a set of ARM-developed scheduler enhancement that implements the GTS technique.

LDTS

とある。上の記事はこれの和訳に近いかも。

OR を取るとこんな感じ。

  1. Cluster Migration Use Model
    • Hypervisor Mode
    • 旧名は Task Migration Use Model
  2. CPU Migration Use Model
    • Linaro は In-Kernel Switcher (IKS) Mode と呼ぶ
  3. MP (Multi-Processing) Use Model
    • すべてのコアをOSスケジューラで効率的に使う技術自体のARMでの名称が Global Task Scheduling(GTS)
    • GTS の一実装であるパッチセットを big.LITTLE MP と呼ぶ
    • big.LITTLE MP は HMP (Heterogeneous MP) とも呼ばれる

ところで ARM TechCon 2015 という ARM のイベントでこの辺の最新状況が話された様子。

このイベントの直接の資料は見つからないが、探してみると似たようなイベントが台湾であり、同じタイトルでそこには資料が置かれていた。

この p.17 を見ると、

  • HMP
  • HMP, IPA (Intelligent Power Allocation)
  • IPA, EAS Gen1 (Energy Aware Scheduling)
  • EAS + IPA Gen2

という感じで MP Use Model の技術がさらに進化している様子がわかる。

以上、まずは用語を整理してみた。つづく