ニュースサイトを一読すると今回の目玉はスーパーハイビジョンとデータ型放送だったことが分かるが、他にも興味深い展示は多くあったので展示の流れに沿ってレポートしようと思う。内容や写真などはニュースサイトを参考にしていただくとして、どちらかというと私が質問したことや感じたことなどを中心に。番号はパンフレットに対応。
01 放送の未来像
NHKは2007年度にサーバー型放送の開始を予定している。本当に?というのはさておき、それが実現すると生活はこうなるという展示。お父さんの嗜好にあわせてお勧め番組をBMLで提示したり、おばあさんがコンテンツの視聴権利を購入しそれを孫にプレゼントすることで孫は無料でダウンロードできるとか。
ここ(リビング)で録画した映像は隣の子供部屋でも見れますと言って隣に案内されるデモスタイル。なんか去年までと全然違う。雰囲気が明るい。最初の展示がこういう感じであることからも分かるように、今回の技研公開は一貫してNHKからのライフスタイルの提示というのが私の印象。
07 スーパーハイビジョンシステム
7680×4320ピクセルの解像度。22.2chのサラウンド。450インチのいスクリーン。こんなの国かNHKしか研究できません。ちなみに22.2というのはぐるっと22個のスピーカーに囲まれるのではなく、上層に9ch、中央層に10ch、下層に3ch、サブウーハーが2つという構成。スーパーハイビジョン自体は数年前から展示されているが、今回はリアルタイムで撮影した映像を見れた点が新しい。また2025年に実用化というプランも提示された。映像も音もド迫力ですがこんなもの必要かというNHKバッシングは当然予想され、一応次につながる。
06 高臨場感システムと人間科学
明示的には言っていないが、なぜスーパーハイビジョンが必要なのか?という理由づけの展示だと思う。
一般に、ハイビジョンテレビは「画面の高さ(H)の約3倍(3H)」が離れて見るのに適切な距離とされている。ブラウン管と違ってそんなに離れなくてもいいですよ、だから日本の家庭でも大きいテレビ置けますよというのが各メーカーのうたい文句。逆に言えば3Hより近づくと画素が見えてしまうという意味。
一方、離れれば当然テレビ以外の壁や家具が視野に入ってくるわけで、では臨場感あふれる映像の観視画角(画面の視野角ではなく人間の水平方向の視野。最小は0度、最大は180度。)は何度か?という実験をしたというのがこの展示。アンケートの結果は80度。それ以上広げても印象としてはさちってしまうとのこと。
で、上記2つのあわせ技で、臨場感あふれる映像が観たければ、80度の観視野角を実現し、画素が見えてしまわない程度に高精細な解像度およびディスプレイが必要。つまりスーパーハイビジョンという導出。
そこまでいうのなら横だけじゃなくて上下とか、むしろ東大のCAVE *1 みたいに360度囲んだほうがそりゃいいんじゃないのと研究員の人に質問してみたがその通りですとのこと。まあ現実的なのは平面です。
10 カメラに映らない情報を利用した番組制作技術
- 制作支援情報提示装置
- リアルタイムカメラワーク検出
前者はこういう感じ。一般に、テレビ映像には画面には映らないが同期信号やカラーバースト信号を含んでいるブランキング期間と呼ばれる時間がある。撮影するカメラと字幕装置を同期させて、映像のブランキング期間に字幕を出せばアナウンサーには見えるが、視聴者の画面には映らないというのがからくり。非常に面白い。
後者はCGをリアルタイムで適切な位置に表示するという内容。赤外線LEDを使ってカメラ位置を測定するというのは特に新しくないが、実際に恐竜のCGが目の前に動いている完成度はさすがNHK。
*1:CABINと呼ばれるようになったらしい。http://www.iml.u-tokyo.ac.jp/