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Schi Heil と叫ぶために

hiroakiuno's blog

岩田社長に学ぶ○○改善論

「少しずつ改善していくかそれとも最初からやり直すか」
何かを変えたい、直したいと思うことがある。組織、文章、ソフトウェアの構造、PC に散らばったファイル、部屋のレイアウト、生活習慣、etc…、そして自分自身。それが何であれ、いざ実行を考えたときまずこの壁にぶち当たる。一度に両方は選べないし場合によってはどちらかを選択したら後戻りできないこともある。

DS の成功さらには Wii の発売で一躍有名になった任天堂の岩田社長。家電やネットまで含めても、この業界でいま最も注目されている経営者の一人だろう。実力に加えて運もなければこれほどの成功はなかったと思うが、任天堂を見事建て直したその手腕には多くのヒントがあるに違いない。

これまでの任天堂の企業体質自体をドラスティックに変えるのではなく、その文化を継承しながら、今までの社内リソースを部分的に再編し、企業の方向を徐々にだが着実に変えていく。

岩田氏は日産のゴーン氏と同じく、任天堂の潜在力を引き出すために、体制にちょっとした工夫を積み重ねていくことで、社内全体の歯車がかみ合うようにしていった。任天堂風味はあいかわらず任天堂風味のまま、少しずつ修正を加えていく。

文化の継承、潜在力を引き出す、ちょっとした工夫。気に入らないから変えてやるではなく、少しずつ自分の思う方向に導いて行くという「柔」のやり方。リーダーシップの本当の意味を改めて考えさせられる。一方でゼロからやり直す「剛」の手法を選択することもあったようだ。

なお、『MOTHER2』が開発中止寸前だった時期にプログラマ、プロデューサーとして参加した。「今のプログラムをいかすと3年かかります。一から作り直すと半年で出来ます」と発言し、プログラムをほぼゼロから半年で作り直した手腕が高く評価されたが、のちの『MOTHER3 豚王の最期』(NINTENDO64版)は、逆に開発中止を決める立場になった。

2006年4月20日に、一度開発者の立場で中止した『MOTHER3』の発売を任天堂社長という立場で実現する。製品としてようやく日の目をみた『MOTHER3』は彼の思想を強く反映した2Dドットの素朴な面白さがあるゲームになっている。岩田は「MOTHER3を一回中止にしたことはいまのDSやWiiにつながっている」と強調する。

プログラムを書いていると、途中で最初からやり直したいという衝動にかられることがある。結城さんはそれをはじめからやり直したい症候群と呼んでいるようだ。特に大規模なソフトウェアの場合、最初から全ての予定を立てることは難しく、やってみて初めて気づくことが多々ある。最近のソフトウェア工学ではそれで当たり前という考えの基に様々な手法が提案されているが、そのときゼロからやり直すかあるいは少しずつ改善するか、どちらを選択するかは腕の見せ所だ。確かに多くの場合はじめからやり直したい症候群には待ったをかけた方がよい。しかしゼロからやったほうが早い、それが正しいと思う時もある。そういった意見に耳を傾け、総合的に判断を下せるか、それこそがリーダーに求められる力。それはマネージメント力に加えて技術力に他ならない。岩田さんはあの「バルーンファイト」などを手がけた天才プログラマだったそうだ。

状況にあわせて柔と剛をうまく使い分け正しいと思う方向に導いていく。穏やかな口調とは裏腹に素晴らしい先見の明を持つ岩田さんのその眼は次に何を見据えているのだろうか。