Schi Heil と叫ぶために

hiroakiuno's blog

考える脳 考えるコンピュータ

一言で言うと、この本は脳神経科学と人工知能における新しい仕様である。

考える脳 考えるコンピューター

考える脳 考えるコンピューター

著者は Palm の生みの親でシリコンバレーの成功者ジェフ・ホーキンス。コンピュータの分野で成功した後、今度はその資産を神経科学の研究所の設立に投じた人だ。

ホーキンスが言う「知能を備えた機械」とは、従来の人工知能におけるチューリングテストに合格するかという定義に沿った人間くさい機械ではなく、大脳新皮質にあるアルゴリズムを実現するだけの割り切った機械だ。特にホーキンスが主張するの「記憶による予測の枠組み」でそのポイントは以下の4つになる。

  • パターンのシーケンスを記憶する
  • パターンを自己連想的に呼び戻す
  • パターンを普遍の表現で記憶する
  • パターンを階層的に記憶する

個々の詳細は本に譲るとして、重要なのはホーキンスが述べているのは知能を備えた機械を作るための具体的な実装方法ではなく、それを作るために必要な全体の設計モデルである点だ。いわば仕様であり実装方法はこの本には書かれていない。しかし今後このモデルを元に様々な実装や拡張が生まれ、さらにこの理論自体も改善がなされていくだろう。そして、研究所では実装の方も着々と進められているらしい。

Hawkins氏が考える大脳新皮質のメモリシステムのプロセスをソフトウエア化したのがHTMである。
(略)
HTMはアクションがプログラムされていないという点で、通常のコンピューティングとはアプローチが全く異なる。観察を通じて学ぶことで、適切なアクションを起こせるようになるため、HTMシステムでは時間も重要な要素である。能力を発揮するようになれば、予測ツールとして効果を発揮するという特徴を持つ。

【コラム】シリコンバレー101 (216) Palmの父が提唱する"考えるコンピューティング" | エンタープライズ | マイナビニュース

以前、情報革命(I の革命)の次は同じ I でも Intelligence 革命だろうというエントリを書いたことがある。

それこそまさに Intelligence 革命が来る頃には、このホーキンスの理論は最も基本的な枠組みとなっているかもしれない。彼は知能を備えた機械は、ネットのように我々の生活を大きく変え、しかも電話や車のように当たり前のようになっていくと予想している。

知能を備えた機械をつくるビジネスは、コンピュータ産業と同じ道筋をたどって発展するだろう。専門の知識や能力を与えるために機械を訓練する人や、できあがった記憶の設定を販売したり、交換しあったりする人々があらわれる。

この分野には、科学的にも商業的にも、はかりしれない可能性がある。階層的な記憶システムの上に新しい産業が築かれ、インテル社やマイクロソフト社にあたる会社が産声をあげるのは、これから10年以内だろう。

非常に楽しみな世界だ。