私の周りにもネットの世界に詳しい人はたくさんいるが、ケータイのネットとなると精通している人は少ない。我々 PC ネット世代は今や PC でネットに接続することが当たり前であるがゆえ、わざわざケータイでネットに接続することを面倒だと感じてしまう。
今の若い子にとって、インターネットとはイコール、ケータイのことなのです。その年齢層のユーザーに PC コンテンツの話をしても「?」という反応しか返ってきませんよ。
ちょうど我々親の世代が「ネットがないと仕事もできない」という意見を理解するのが困難だったように、我々 PC ネット世代はややもするとケータイの世界の進歩に気づかず、そしていつの間にかついていけなくなるかもしれない。
本書はケータイ SNS の雄モバゲータウンを例に、「PC の世界のネット」と「ケータイの世界のネット」を比較してその違いを解説している本である。そして副題には「オジサンにはわからない、ケータイ・コンテンツ成功の秘けつ」というフレーズが付けられている。自分はネットのことはそれなりに分かっているつもりという人こそ本書でケータイネットの今を知っておく必要があるだろう。まあ本を読んで時代に取り残されないようにしようという考え方自体がオジサンではあるのだが。
モバゲータウンがすごい理由 ~オジサンにはわからない、ケータイ・コンテンツ成功の秘けつ~ (マイコミ新書)
- 作者: 石野純也
- 出版社/メーカー: 毎日コミュニケーションズ
- 発売日: 2007/06/19
- メディア: 新書
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ケータイも PC も所有しているのが当たり前の現在、違いと言われれば画面サイズ、キーボードという物理的制約に加えて、常時電源ONやユビキタス性が思いつく。本書ではそれ以外にもネットビジネスの観点から以下を挙げている。
- ガバナンス (コンテンツの内容が比較的自由な PC ネットに対して、ケータイのネットコンテンツはキャリアの基準や監視があり、またそれが必要でもある)
- ギャランティー (PCの世界ではメールは届かないこともあるがケータイではそれが許されない)
- 個人が特定しやすい (PCの世界ではフリーメールアドレスさえあれば簡単に他人になりすませる。ケータイは契約と端末の管理が厳しい)
また本書では公式サイトと勝手サイトというキーワードが頻繁に出てくる。i-mode のメニューをたどっていける「公式サイト」と、そうではないモバゲータウンのような「勝手サイト」。以前は公式サイトに載せてもらうことがビジネス成功の早道だったが事情が変わってきている。
検索エンジンやパケット定額制の普及によって、公式サイトにはキャリアによる課金代行というおいしさは残っているもののそれ以外にメリットがなくなってきており、また勝手サイトの方もキャリアと提携したりして今後は勝手サイトが拡大していくだろうという著者。またあくまでケータイ用のコンテンツと PC 用のコンテンツは別であり、携帯のフルブラウザも、スマートフォンもケータイのスタンダードになるとは考えていないという著者。正直目から鱗が半分、なかなか理解しづらいが半分だが、最後に PC 世代でも明らかに認めざるを得ないケータイネットの利点を引用しておく。
いまのグーグルは、現実社会の行動までは追えません。しかし、ケータイであれば、買い物履歴や位置情報など、個人の行動まで逐一特定できる。それだけの力を秘めているのがケータイなのです。
iPhone に続いて Google ケータイまで噂されている昨今であるが、Apple や Google のみならずあらゆるビジネスがケータイを無視できなくなっているのは確かである。