地元の図書館で受験勉強していた頃だからおそらく高3だと思う。受験生にとって図書館というと本を借りる所というよりはエアコンが効いている無料の自習室という場所だったが、全く受験勉強がはかどらなかったので1階に下りてぶらぶらしていたら、フェルマーの最終定理を分かり易く解説すると謳っている本を見つけた。本のタイトルは覚えていない。ワイルズによって証明されたのが1995年だからまだ1,2年しか経っていない頃。借りてみて途中まで読んでみたが全く理解できなかった。まあ当たり前といえば当たり前だが、期日を待たずに早々と返却するのが何か恥ずかしかったのを覚えている。本書はそのときとは異なり難解な証明はほとんど登場しない。でも大定理が証明された歴史とそのドラマが十分に感じ取れる。噂どおりの感動作。
- 作者: サイモンシン,Simon Singh,青木薫
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/05
- メディア: 文庫
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子供の頃誰もが口にしたセリフが「数学ってこんなことやって何の役に立つの?」というフレーズ。私の場合数学は好きだったのでもっぱらその矛先は古典とか漢文に向かっていた。今なら少しはうまく説明できるかもしれない。このブログが世界中からアクセスできるのも数学のおかげだし、車が走るのも高層ビルが建つのも数学は関与している。そして役に立つということ以上に数学にはそれ自体が面白いという面もある。美しいといったほうが良いのかもしれない。
フェルマーの定理自体はそれを利用して何かが証明できるというものではないらしい。確かにそんな気はする。でもそれには数学のある世界とある世界に橋を架けるという新たな道を切り開く意味があるそうだ。
ワイルズは、谷山=志村予想という道を通って楕円とモジュラーの世界を統一し、それによってほかの証明への近道を数学者たちに教えた。つまり、ある領域の問題に直接ぶつかるのではなく、対応する別の領域の問題を通して攻略することが可能になったのである。こうして、古代ギリシャにさかのぼる楕円方程式の古典的な未解決問題も、モジュラーの道具立てやテクニックを駆使して調べ直せるようになった。
ここでも重要なのは結局物の見方という話。私はこれがいかに重要なことであるかを書くことが出来るが、余白が狭すぎるのでやめることにしよう:p