これは読んでおかないとね。
ボナンザVS勝負脳―最強将棋ソフトは人間を超えるか (角川oneテーマ21)
- 作者: 保木邦仁,渡辺明
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2007/08
- メディア: 新書
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コンピューターは人間が創ったものだ。その上で動くソフトウェアはプログラミング言語という人間が創った言語で書かれる。このような制限された世界で人間が表現した作品が果たして生みの親である人間を本当に超えられるのだろうか。ただし将棋というゲームもまた人間が創ったものである。そこが勝負になる理由。
チェスと比較して、取った駒を再利用できる将棋は考えられる手が多く一般に難しいと言われている。チェスが10の120乗に対して将棋は10の220乗。囲碁はさらに難しく360乗になるらしい。コンピューターがチェスのチャンピオンを破ったのは10年前の1997年のことだが、2007年の現在では人間がたまに勝てるくらいのレベルにまで進んでいるそうだ。ちなみにチェスよりも単純なオセロや五目並べではコンピューターは人間をはるかに上回っている。オセロなんかは最後の20手くらいは完全読みされるらしい。
では囲碁のチャンピオンはチェスやオセロのチャンピオンよりも優れているのかというとそれは違う。それではなぜコンピューターはチェスで勝てて将棋では勝てないのか。それはコンピューターは勝つことを考えているのではなくゲームを解こうとしているからだ。たとえチェスよりははるかに膨大でも有限なんだからコンピューターは人間を超えられるはずというボナンザの作者・保木さんに対して、コンピューターがプロに一勝する日はそう遠くないももの将棋では完全に超えることは考えられないというトップ棋士の渡辺さん。
人間には将棋の組み合わせを完全に理解することはできない。だからゲームとして成り立つとも言える。そしてコンピュータもまた動作速度が有限なので完全読みには至らない。だから人間と勝負する意味がある。しかしボナンザは将棋しか出来ない点を忘れてはならない。ボナンザはそのままではチェスやオセロを指すことは出来ないし、もちろんワープロソフトにも辞書にもならない。そして同じ将棋であっても渡辺さんはこのように言っている。
現在のコンピュータは、一局の将棋を振り返って、どこがどう悪かったのかを教えてくれる先生の役割はまだできない。
そう考えると、会話をする、料理を作る、絵を描く、スポーツをする、車を運転する、家を建てる、宇宙へ行く、…、人間ははるかにすごい。ただしそんな「すごい人間」は「自分よりすごいもの」を作れるほどまでにすごいのだろうか。たとえ人間に勝つ将棋プログラムが作れても、全てで自分を超えるものを創れるほど人間は賢くないのではないと思っている。