野村の野球論を2冊まとめて。
巨人軍論 ――組織とは、人間とは、伝統とは (角川oneテーマ21)
- 作者: 野村克也
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2006/02/10
- メディア: 新書
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あぁ、阪神タイガース―負ける理由、勝つ理由 (角川oneテーマ21)
- 作者: 野村克也
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2008/02
- メディア: 新書
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前者の巨人本は昔の巨人はなぜ強かったのかというのを、野球の技術の観点ではなく人間やら組織の観点で述べた本。そいういった技術以外の要素を野村監督は「無形の力」と呼んでいる。一方の阪神本は巨人本と重複する内容も多いが、どちらかというと阪神に対するノムさんの愚痴。だからなのか知らないがタイトルにも「あぁ」がついている。
野村の組織論に興味がある人は実際に読んでいただくとして、ここでは野球という意味で興味深かった箇所を二つメモしておきたい。
一つ目は巨人本に書かれている当時の巨人がメジャーリーグから取り入れたという新しい技術。当時の巨人はメジャーからたくさん技術を輸入しており、そういった「自分たちはほかより進んだ野球をやっている」という意識が強さの一つだったとノムさんは言っているのだが、それはさておき、その技術というのが私が野球をやっていたときには既にどこのチームでも練習していたピックオフと呼んでいた内容だったこと。中学校の記憶は確実で、もしかすると小学校のときでも練習してたかもしれない。
p.103
バントをさせずに一塁ランナーを牽制で刺すケースもあった。通常のバントシフト同様、一塁手と三塁手はピッチャーのモーションと同時に動く。それを見たランナーは大きく塁を離れる。しかし今度はピッチャーがバントをさせないボールを投げ、キャッチャーが間髪をいれず一塁のカバーに入ったセカンドに送球し、ランナーを殺すのである。
(中略)
こうしたプレーは巨人以外のチームはいっさい行っていなかった。すべて巨人が日本に持ち込んだものなのである。そんなプレーがサインで行われているなどとは、ほかのチームは夢にも思わなかったのだ。
どこの野球部でも知っているので牽制程度の意味しか持たない技術だったのだが*1、それが巨人がメジャーから輸入したというのは驚き。
もう一つは、阪神本の以下の箇所。南海、ロッテ、西武でプレーし、ヤクルト、阪神、楽天以外に社会人野球でも監督の経験があるノムさんならではのコメントだと思う。
p.174
将来どうなるかわからない選手は社会人に生かせたほうがいいと考えるもうひとつの理由は、プロの二軍よりも社会人のほうが選手を育てるには環境がいいからだ。
(中略)
ほとんど仕事はしなくていい代わりに、そのプレッシャーはプロの二軍の比ではないのである。だから勝つためにどうすればいいか真剣に考えるし、選手としての自覚も生まれる。
シリーズ完結編はやはり楽天本なるのだろう。
*1:ピックオフの練習はランナーも今からピックオフをやるのが分かっているのでなかなか演技が難しいのだ