競争が激しい割に利益があまり期待できない市場を、血みどろの戦いが繰り広げられるということからレッド・オーシャンと呼び、今はまだ生まれていない未知の市場をブルー・オーシャンと呼ぶ。どちらで飯を食うのが良いかと聞かれれば誰でもブルー・オーシャンと答えるが、ではどうやってレッド・オーシャンから抜け出せばよいかと言われるとそれが分かれば苦労しないとなる。本書はその具体的な方法を述べている。
一般にこの手の本は同じ話を言い方を変えて何回も述べることが多い。本書も例外ではないものの、様々な企業の実際の商品やサービスが具体例として多く紹介されている点が読んでいて飽きさせずお勧めである。
ブルー・オーシャン戦略 競争のない世界を創造する (Harvard business school press)
- 作者: W・チャン・キム,レネ・モボルニュ,有賀裕子
- 出版社/メーカー: ランダムハウス講談社
- 発売日: 2005/06/21
- メディア: 単行本
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前半はブルー・オーシャンを創造するための指針について書かれている。本書で紹介されている「アクション・マトリクス」というツールは使えるなと思った。これは考えるアイデアを従来の製品やサービスと比較して
- 増やす
- 付け加える
- 取り除く
- 減らす
の4つの要素に分けて整理するもの。増やすと減らすを同時に考える。新製品では新機能の追加ばかりに目を奪われがちだが、増やすだけでは必要以上に複雑で高コストになってしまう。何かをやめることが重要というのは頭では理解できてもなかなか実現が難しいので、だからこそ最初からフレームワークとして最初から用意しておくアイデアは非常によいと思った。本書で繰り返しブルーオーシャン戦略の成功例として挙げられているシルク・ドゥ・ソレイユやイエロー・テイルは、まさにどこにこだわりを置き何に注力しないかが明確な例である。
後半はブルーオーシャン戦略を実行する上で組織をいかに導くかについて書かれている。内容はいわゆる組織論・リーダー論だが、「三つのE」という表現は覚えておきたい。
- Engatement (関与)
- Explanation (説明)
- clarity of Expectation (明快な期待内容)
いくら良い戦略があっても、従業員全員が戦略に共鳴しないと実行できないとして、そのためには3つのうちどれか一つが欠けてもうまくいかないと言っている。一人ひとりに意見を求め従業員の考え方を経営陣が重視していることをちゃんと伝えること。戦略を決めるに至った経緯をちゃんと説明して理解を引き出すこと。戦略がきまった後に従業員に何を期待するのか明確にすること。最近、メンバーの参加意識というのは数値には表わしにくいが非常に重要な無形の力だと感じている。仕事もそう、スポーツもそう。本当にそうだ。常に頭に置いておきたい三つのEである。