ロングテールという考え方を提唱したクリス・アンダーソンの著書。
世の中変わったよなと思う本だった。
- 作者: クリス・アンダーソン,小林弘人,高橋則明
- 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
- 発売日: 2009/11/21
- メディア: ハードカバー
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フリーを利用したビジネスモデルというと広告モデルが思いつくが、それだけじゃないというのを教えてくれた。本書ではフリーのビジネスモデルを大きく4種類 (直接的内部相互補助、三者間市場、フリーミアム、非貨幣市場) に分けている。それぞれ具体例でメモしておくと、
- 直接的内部相互補助 = 携帯電話本体は無料、通話は有料モデル。飲食店のドリンクで設けるモデル。結局内部のどこかで回収する。
- 三者間市場 = テレビは視聴者は無料、広告主がコストを負担。三者間でつじつまがあう。PDF の閲覧は無料、作成は有料モデルもここに属するらしい。
- フリーミアム = flicker の有料会員モデル。フリー + プレミアム。ちょっとずつたくさん儲けるので規模が重要。
- 非貨幣市場 = ウィキペディアとか。アメリカの大学の無料オンライン講座とか。
となる。
ところで経済学とは「稀少なものの選択の科学」という解釈があるようだ。稀少なものは時代とともに変わっていく。マイクロソフトはそれまで稀少と考えるのが常識だったトランジスタを浪費して成功した。(Windows は PC の世界に GUI を導入したがそれをトランジスタの無駄使いとも考えられる。ただし昔と違ってトランジスタはほぼコストゼロとみなせるようになっていた。) Apple は記憶容量を潤沢だと考えて iPod を開発した。同様にグーグルは情報を無料にした。
じゃあ「次は」どうなると考えればよいだろうか。そのヒントとなる既存の成功例は本書にたくさんある。でも答えは自分で考えるしかない。次を考えるためのフレームワークは少なくとも3つあると思う。それは、
- 何をあちら側におくか
- 何を共有するか
- 何をフリーにするか
の3つだ。1番目が何のこっちゃという人にはウェブ進化論を読むのがお薦め。2番目は例えばウィキノミクスがいいと思う。そして3番目は本書。
本書では形ある商品(ハードウェア)の最小単位を「アトム」、情報(ソフトウェア)の最小単位を「ビット」と呼び、ビットは無料になりたがっている、それは万有引力のようなものだとまで言っている。アトムとビットを組み合わせて商売しているのが日本の電機メーカーだが、稀少と潤沢の判断、もっと言えばこだわるところとこだわらないところをのバランスが改めて問われていると感じた。