中国家電が強い理由を聞かれると、たいていの人はいまだに「人件費が安いから」と答える。でも中国の人件費はとっくに高い。技術力もありさすがに安さだけでは説明がつかない。
先日、以下の動画を見た。その中で中国経済ジャーナリストが、中国家電の強さの理由を説明しており、そこで使っていた言葉が「垂直分裂」。垂直統合でも水平分業でもなく初めて聞いた言葉。
中国家電メーカーは要素技術を全て自前で開発しよう(垂直統合)とはしない。代わりにいろんなサプライヤーから一番安い部品を買い集める。つまり「調達の多角化」を行っている。しかし、家電業界は水平分業型の PC やスマホと異なり、それほど界面がきれいに定義されている業界ではない。安いという理由だけで異なる部品を使うと普通は動かない。それをなんとか動くようにしてしまう「すり合わせ技術」。これが強さの理由だと。
動画の中では、このやり方を象徴する中国語として「賽馬制(サイマー・ジー)」 が紹介されていた。サプライヤーを馬に見立て、「よーいドン」で走らせてそして、一番安いところから調達するという意味だ。
| 垂直統合 | 部品→製造→販売まで自社で一気通貫 | かつての日本家電 |
| 水平分業 | 同じ工程を専門企業どうしが横に分担 | PC やスマホ |
| 垂直分裂 | 調達の多角化となんとか動くようにするすり合わせ技術 | 中国の家電 |
なお、この「垂直分裂」という言い回しは、経済学者の丸川知雄氏が『現代中国の産業』で用いているものだという。
AIに尋ねたところ、「垂直分裂」は丸川氏が独自に使っている表現で、学術的な標準用語としてはvertical disintegration(垂直非統合)が近いらしい。いずれにせよ、この「調達の多角化」と「なんとか動くようにするすり合わせ技術」が強さの理由という説明はしっくりきた。
似た話で、ふと思い出したのが、15年前に書いたこの記事
なぜインドがくると思うのかに対して、当時、
未発達の市場と最新の技術。この二律背反的な要素を兼ね備えている数少ない国が、インドである。
という理由を書いていた。
- インドがこれからくる理由は「未発達の市場」と「最新の技」。この二律背反的な要素を兼ね備えている国だから。
- 中国家電が既に強い理由は「調達の多角化」と、「それを束ねるすり合わせ技術」。
このように整理しておこう。


