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hiroakiuno's blog

書評 - ウェブ時代をゆく

「大きな組織」で働いていて梅田さんの言う「30歳から45歳の15年」の最初の一年に突入した私(30歳)。少し前に読了したこの本だが時間を空けてもう一度読んでみた。

ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書)

ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書)

私が以前から大きな組織に対してもう少し何とかならんかなと思っているのは、自発的な独学がしづらい環境ということだ。梅田さん(羽生さん)の言葉を借りれば「学習の高速道路」が少ない。学生時代の研究活動や最近の Web2.0 的な小さな組織の周りにある環境と比較してそう感じることが多い。最近の学生さんにどんな仕事に就きたいかと聞くと 自分の成長が感じられる仕事 という回答が多いそうだが、そういう意味では成長が遅い気がして不安になる。自分が学んだことは高速道路化すれば半分の時間もかからないのではないか思ってしまう。

社会に出たらすべて教科書があるわけではないという意見はその通りだろう。だから道がなければ自分で切り開けという意見も尤もだと思う。ただ、数学や物理が先人の研究の上に成り立っているように、企業が社員に勝負させるポイントは高速道路の先であるべきで、学習の高速道路が未整備なことは、自発的に学びづらいという個人の不満だけでなく、組織にとっても大きな欠点になっていると思う。

高く険しい道を行くにしても、けもの道を進むにしても、高速道路が整備されていないのでその麓に到達するまでにずいぶんと時間がかかってしまう。疑問があれば一番詳しい人を探して聞くしか方法がなかったりするが、その人も麓に到達する前だったりして、疑問の地図がトータルでなかなか埋まっていかない。よって実際の現場では細かい話になるとあの人にも確認しないとの嵐になる。これは大企業で意志決定が遅い理由の一つでもある。

この解決には、ありがちなドキュメントをちゃんと書こうぜ運動だけでは足りないと思う。会社が明日の飯を食っていくためには、とりあえず一番詳しい人に頼らざるをえないのは当たり前で、単に性格がせこいからというのではなく、風土が情報の囲い込みを促進している部分がある。本書で「希少性をコントロールする概念からの脱却」と説いている話だ。

ところで最近情報を公開するのが非常にうまい人に出会った。その人のすごいところは、スピードが優先されるときはスピードを優先し、十分な検討が必要なものにはしっかりまとめてから情報を出すそのタイミングとバランス。その人のその部分を最近ロールモデルにすることに決めた。大企業で30歳くらいだとまだまだ上がつかえていているからさという若手芸人の立場で、なんとなくポジション取りが難しいと感じていた頃。そんなときこの本とその人のおかげで、高速道路がなければ自分で整備してやろうというテーマを思いついた。現場で手を動かす人が見晴らしの良い場所から眺めて整理するのって、ある意味我々ににしかできないことで、そう考えると結構モチベーションも上がってきた。

無いのなら自分で作ってしまえばいいじゃん。この道路建設には税金の無駄遣いも環境破壊もないしさ。