たまっていた書評を片付けよう。まずは1月ごろに読んだこれ。
サブプライム問題とは何か アメリカ帝国の終焉 (宝島社新書 254)
- 作者: 春山昇華
- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 2007/11/09
- メディア: 新書
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依然として収束の気配が見えないサブプライム問題だが、この本は昨年の11月に出版されたものなので、昨今の余震についてではなくそもそもサブプライムとはという本震の方の解説である。歴史に残る問題になっているので、今さらといわず原理を理解しておくのは悪くないだろう。
サブプライム問題とは住宅の価値は下がらないというバブルを借り手貸し手が信じ、異常な住宅ローンの貸し借りを続けていたのがはじけた結果である。かつての日本の住専問題と比較されることが多いが、証券化を初めとする金融技術の進歩が話を複雑にさせ、また影響を世界に広げた原因にもなっている。
サブプライム問題とは何かの解説の後、最後の章ではサブプライム問題その後の分析が述べられている。
そもそも戦後のアメリカ以外の国の好景気は、アメリカに物を売ることによって成り立っていた。逆にアメリカは貿易赤字を請け負う代わりに防衛や金融の仕組みを抑えた。アメリカ帝国主義の背景にはそういったバランスがあった。しかしサブプライム問題でアメリカの消費が落ち、アメリカが借金できなくなると、そのアメリカ帝国主義が維持できなくなる。この本の副題にもなっているアメリカ帝国の終焉というのは世の中平等になってめでたしめでたしという話ではない。つまり、
現状のままの世界の経済構造では、アメリカの赤字の縮小は日欧の輸出の減少を意味する。つまりアメリカが赤字体質をやめれば、日本や欧州の景気の低迷を招くのだ。
アメリカが次々に海外から物を買い続けてくれたから、世界経済は成り立っていた。とすれば、サブプライム問題後の世界経済のポイントも、「アメリカが物を買い続ける力(バイイングパワー)を維持できるか」という点になる。
アメリカの代わりといえば中国が思いつくが、中国がアメリカの代わりになるための条件として著者は、
- 人民元が貿易上の決済通貨となること
- 中国が貿易赤字刻国になること
を必要条件にあげている。現在の中国をみているとそれは難しい気がする。アメリカの代わりというのは簡単に見つかるものではない。